ラスト・サムライ

昨日公開から2週目にしてラスト・サムライを観てきました。公開前の劇場版・TVCFが出来が良さそうで割と期待していたのですが、なかなかでした。

まず気になったところを突っ込んでおきましょう。事前におすぎさんの感想を聞いていたのでだいたい予想はしていたのですが、「吉野の里」のようなところは日本じゃないですよ。なぜシダ植物が群生しているんだ!? それにあんな立派な山脈どこにあると。高い山はあってももっと急峻でとてもあんな里村は作れないんじゃないでしょうか。里の様子を見ても稲作の田はなさそうに見えたのですが、食事にはなんと白米(白かったので多分ですが)がでてましたし。隠し田があるか、米は外部との交易で入手しているのかもしれませんが。それに一応里の指導者の妹の家ですから特別上等な食事内容だった可能性はありますね。

それに勝元は天皇の師範で臣下だそうですが、この関係もちょっとおかしいような気がしますね。武士が仕えるのはどっちかというと将軍なのでは。まあ1000年の昔から云々言っているしいいか。実はあまり自信ないし。
あと変ではないかもしれませんが忍者がボウガン使うのもなんか締まりませんね。いやそれ以前に明治なのに忍者?ということの方が変か?

もう一つだけ。オープニングで「サムライは名誉(honor)の為に生きる」みたいなナレーションがありましたが、名誉という言葉はちょっとニュアンスが違うような気がするんですよね。名誉を重んじるのは騎士道の方では。表現しにくいのですが昔何かで読んだ話を思い出しました。「電車の車内で老人が立っているのに席を譲らないとき、アメリカ人は"格好が悪い"と思うので席を立つ。日本人は"恥ずかしい"と思うので席を立つ」というような内容で、確かに"格好悪い"と"恥だ"というのは似ているようで微妙にニュアンスが違いますよね。イギリス人なら"紳士的でない"から席を立つんでしょうか。これと似たようなもので、"名誉"という言葉はちょっとそぐわないような。

と、突っ込みたくなる部分は結構あるのですが、あんまり気にならなりませんでした。所詮フィクションだと思えば。それどころか近年まれにみる感動できる映画でした。映画で感動したのは「サトラレ」以来です。
考えさせられる点はいろいろあるので人によってメインテーマは違うでしょうが、私は「人が心安らかに生きるために必要なのは何か」ということがメインテーマとして感じられました。答えは出たような出ないような、難しいところですが。すべきことがあるというのも幸福なことだと思いますが、それをいかに為すか(生きるか)という指標(信念)があるかどうかということが大きな違いなのだなと思いました。テーマを持って日々過ごしているかどうか、と表現してもいいでしょうか。

戦闘シーンはもちろん迫力がありましたが、チャンバラシーンも緊迫感があって良かった。私はあまり時代劇観てないですがこれは国産物(?)でもこれほどのものはなかなかないのでは? いやわかんないですけどね。私は好きでした。ちょっとロード・オブ・ザ・リングを思い起こしてしまいましたが。やっぱり欧風なんでしょうか。それから最初に大尉が木刀を持つときに必ず片手で持って構えていたのが、おおなるほどと感心しました。以前小説で、西洋では刀(サーベル)は必ず片手で握るのが定石で、剣道では片手で握るのは邪道だ、というようなことを読んだことがあったので。実際観てみると確かに木刀は片手持ちだとしっくりこないですね。
渡辺謙がアカデミー助演男優賞ノミネートなるか、というのが注目されているみたいですが、とても存在感があってこれは事実上主演なんじゃないでしょうか。是非ノミネートされて、いや受賞して欲しいと思います。
時間が経って改めて思い起こすといろいろけちが付けたくなってきますが、それも出来が良かったからこそでしょう。よくぞこの映画を作り上げてくれました、とキャスト・スタッフに感謝したいと思います。