西の魔女が死んだ

ふらっと入った書店でパッと目についた文庫本を手にとって、タイトルとあらすじでひきつけられて購入。わたしが新しい作家さんを開拓する時はたいていこういう感じです。西沢保彦さんや結城さんのようにあとがきでの紹介やレビュー記事を読んでチャレンジすることもありますが。

今回も書店でタイトルに一目ぼれというパターンでした。

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

学校へ行けなくなった主人公の「まい」が英国人の祖母と一緒に生活する2年前のエピソードと、祖母が亡くなって祖母の家に向かう現在の話。なんとなく「掌の中の小鳥」で紗英が祖母のところに滞在していたエピソードを思い起こさせます。わたしの直感は冴えていたようで、優しい雰囲気と感動的なラストで心に響く作品でした。紗英の祖母は機転を利かせて紗英を勇気づけて学校へ行くようにしましたが、まいの祖母はもっとナチュラルでおおらかにまいを支えます。

ひとつ印象的だったエピソードは、父に聴いた死生観について悩むまいに祖母が別の死生観を語るところです。まいはその説明に納得した訳じゃありませんでしたが、それでも自分なりの解釈を加えて一応の解決をみます。観念が人間にとってどれだけ重要かというのを思い知る話です。

それからその後お父さんに昔聴いた死生観について聴いてみたら全然覚えていなかったことについておばあさんと話す時のやり取りがおもしろい。

「あんまり無責任じゃない?ひどいよね。父親の自覚のない人なんだ」
「まいのパパはいつだってそのときの自分に正直なんですよ。
 まいに対しても、一人の人間として、対等に誠実でなければならない
 と思っているんです」
おばあちゃんはたしなめるように言ったが、笑いすぎて目に涙を
浮かべたままだったので、あまり効果はなかった。
「まあ、悪い人じゃないよね。ただ、ちょっと想像力がなかったんだな。
 自分がこう言ったら、年端のいかない娘はどう思うかっていう……」

お父さん、立場なし。ちなみに最後のせりふは娘のまいのものです。まあこのお父さんだって別のコンテキストでみれば良い父親として描かれるだけの素質はあるんですよね。「となりのトトロ」のパパみたいな感じ?

ところで作者の梨木香歩さんはベテランなので他の作品もいろいろあります。そのうちのひとつ「家守綺譚」は実は別の機会に推薦されているのをみたもので、こういう偶然にわたしは弱いんですよねぇ。ま、みかけたら買ってみましょうか。