フリーランチの時代

フリーランチの時代 (ハヤカワ文庫JA)

フリーランチの時代 (ハヤカワ文庫JA)

小川一水短編集。

表題作「フリーランチの時代」はカラっとライトにファーストコンタクトを描いているけどこれある意味人類オワタの話だよなぁ。ちょっとグレッグ・イーガンの「ディアスポラ」で"肉体人"を半ばむりやり"市民"にすることで"救う"くだりを思い出しながら読みました。

「Live me Me.」もイーガンの「宝石」(祈りの海に収録)を彷彿とさせつつ、小川一水らしくポジティブなラスト。この作品はやはり前半の徐々に知覚できる世界が広がっていくところがおもしろいですね。

「Slowlife in Starship」は小惑星帯にひきこもるニート(いや、主人公は一応細々と依頼仕事をこなしてるんだからフリーターか)の話。低推進力宇宙船はいいですね。あと途中ちょっと戦闘もどきになった時の台詞「よくもだと? それはこっちの台詞だ。しかし口論の前に聞いておく。命に別状はないだろうな」というぬるさがたまらなく心地良い。まあ特にオチはない話。

「千歳の坂も」の主人公のデフォルメされた役人っぽさはどこか星 新一のショートショートの登場人物のようで、これもまあ特にオチはないんだけど妙に胸がざわざわする読後感。あと「事実上(統計上)の不死」というのは未来のどこかの段階で一時的にせよ起きるかもしれないよな、と思うとちょっと不思議な気分でした。

「アルワラの潮の音」は「時砂の王」と背景を共有するスピンオフ作品。他の作品とはちょっと毛色が違い、また小川一水にしては珍しくかなり救いのないラスト。