ガラスの麒麟

加納朋子さんの作品は残念ながらなかなか書店でばったり出会うということがありません。あってもたいてい「ななつのこ」「魔法飛行」「掌の中の小鳥」のどれかで、既に持っているのであまり意味がないんですよね。

ところが昨日別の本を探しに本屋を彷徨っていると偶然「ガラスの麒麟」に出会いました。実は昨日本当に探していた本も麒麟(架空の動物の方です)にまつわるものだったので目についたのかもしれません。

今回はなんと殺人事件が起きます。これまで読んだ作品では一応事件が起きたとしても殺人は扱われませんでした。今回も殺人というのは背景の一つで、その事件そのものを解明していく、というのとは少し違いますし、どこかほんわかした雰囲気は残っています。しかしこの作品で加納朋子さんも一歩深いテーマに足を踏み入れたようです。まだ読んではいないのですが、これ以降の作品群は「ななつのこ」の純粋にファンシーなものとは違って重いテーマのものが多いようですし。

では表題になっている最初のエピソード「ガラスの麒麟」から気に入った一文。

神野先生が言ってたよ。人の心はまるで難しい漢字みたいだって。
書けなかったり、読めなかったり。
とにかくひらがなや、カタカナみたいなわけにはいかないんだ。
だけどその分、強くなれるんじゃないかな。
いろんな読み方ができたり、いろんな意味を持ったりさ。

読めなかったり、いろんな意味を持ったり……。そうかもしれませんね。